【音が少ない】スペイン語の発音ルール【日本人向け言語】

 日本では義務教育で英語を学びますが、その過程で発音にコンプレックスを抱えることになる方が多くいらっしゃると感じます。
 一方、スペイン語は日本人にとって発音が非常に簡単であると評される言語の一つです。ここではスペイン語の音の特徴について記述します。大学の履修で第二外国語の選択に迷われている方、漠然と英語以外の言語を学んでみたい方等の参考になればなと思います。

結論

 スペイン語は、日本語話者にとって発音しやすい言語であり、他の外国人に比べて発音弱者になることはありません。私自身としても、ネイティブスピーカー達に発音の悪さを指摘された経験はありません。

 

本文

 スペイン語の発音が簡単である理由は大きく2つあります。それは「音が少ない」「綴りと発音が完全に一致している」です。それぞれ解説していきます。

 

スペイン語は音が少ない

 私たちは口から単語を発する際に「母音単体」「子音単体」「母音+子音」の3種類の音を組み合わせています。

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(母音単体)+(子音単体)+(母音+子音)

 音が少ない日本語よりも、更に音が少ないのがスペイン語です。日本語話者は5個の母音+27個の子音・拗音を扱っています。一方、スペイン語は5個の母音+17個の子音で構成されています(スペイン南部および中南米ではC,ZとSを区別しないので17個、南部以外のスペインではC,ZとSを区別するので18個)。日本語話者は日常的に扱っている音の種類が少ないため、認識できない音(母音ならæやɛ、子音ならTHやL)の発音や聞き取りに苦労します。しかし、スペイン語なら大きな問題はありません。下表は、日本語話者が日常的に扱っている音とスペイン語の音を整理したものです(五十音ではなく子音・拗音ごとに整理)。

子音ごとに整理した日本語・スペイン語の発音表

 

スペイン語の母音

 日本語もスペイン語も「ア(a)」「イ(i)」「ウ(u)」「エ(e)」「オ(o)」の5個の母音しか存在しません。つまり、スペイン語学習において、母音の発音練習をする必要もなければ、聞き取り練習をする必要もないということになります。全ての母音を認識できる状態で学習を始められます。
 英語の場合、「ア」に近い母音だけでも「a」「ʌ」「æ」「ɑ」「ə」と5個以上あり、母音総数は26個にも及びます。これらを区別して認識できないからこそ、伝えたい単語が伝わらない、知っているはずの単語が聞き取れない、といった事態に陥るわけですね。

 

スペイン語の子音

 子音・拗音(以下、拗音も子音扱い)についてですが、日本語には27個、スペイン語には17個存在します。そして、内15個が両言語で使われているため、日本語話者にとって新たに習得すべき子音は「L」「RR」の2つのみです。

 各子音の詳細は以下。

 「Z」および「Ci」「Ce」は、南部以外のスペインでは英語の「TH(濁音ではなく清音)」と同じ音で発音します。ただし、スペイン南部および中南米では「S」と同じ音で発音し、この発音方法を”セセオ(seseo)”といいます。
 世界的に見ると多数派がセセオで発音しているため、南部以外のスペイン人(マドリード等)であってもセセオ発音を聞き慣れています。TH発音が苦手なら無理に習得する必要はないと思います。私はスペインに住みながらセセオで発音していますが、それを指摘されたことはありません。
 「Si」および「Ci」は、「シ」ではなく「スィ」が正しい発音です。
 ただし、スペイン語には「シ」に該当する音が存在せず、近い音が「Si」「Ci」しか存在しないため、「シ」と発音しても「Si」「Ci」として認識してもらえます。
 「Ja」「Ji・Gi」「Je・Ge」「Jo」は、「ハ」「ヒ」「ヘ」「ホ」を少し濁らせた音で発音されます。
 ただし、スペイン語には「ハ」「ヒ」「ヘ」「ホ」に該当する音が存在しないため、「ハ」「ヒ」「ヘ」「ホ」と発音しても「Ja」「Ji・Gi」「Je・Ge」「Jo」として認識してもらえます。
 「Ju」は、注意が必要です。「フ」と発音してはいけません。
 日本語だと「フ」は「ハ行」に属していますが、「フ」の子音は「F」です。「フ」と発音すると、「ファ行」の「Fu」として認識されてしまいます。「ファ行」は唇を尖らせて発音する音、「ハ行」は口を開けたまま発音する音。実際に発音してみると、「ハ行」の中で「フ」だけ口の動かし方が異なるのが分かると思います。「Ju」は他の「ハ行」同様、口を開けたまま喉から発音しましょう。
 「H」は、発音しません。”hola”と”ola”の発音は同じです。
 「R」は、日本語の「ラ行」と同じで、舌で上前歯をはじいて発音します。
 日本語話者の英語学習に付きまとい続けてくる「L」「R」問題ですが、スペイン語の「R」は練習不要です。スペイン語学習では「L」にのみ注力しましょう。ちなみに、日本語の「ラ行」、英語の「R」「L」、スペイン語の「R」「L」の関係を私の感覚で図示しました。「ラ行」で英語を発音すると、「L」にも「R」にも該当しないため、相手に伝わりにくいのだと思います。
 「B」と「V」は、「バ行」に該当し、区別する必要はありません。
 「Ñ」は、「ニャ行」に該当します。
 「Ñ」は「エニェ」と呼ばれる、スペイン語独特の文字です。日本語では「ニャ行」かつ「イ段」の音が存在しないため(カタカナ表記だと「ニィ」?)、「Ñi」の発音だけは難しく感じることかと思います。ただ、「Ñi」を含む単語だと”compañía”くらいしか私は使いません。頻出する音ではないですし、「ニ(Ni)」で代用してもなんとかなります。
 「LL」と「Y」は、それぞれ「エジェ」「イグリエガ」と呼ばれ、「ジャ行」に該当します。
 「ヤ行」や「リャ行」、「シャ行」で発音する人もいますが、好きなように発音して問題ないです。日本人が「L」「R」の違いを認識しないように、スペイン語話者も「ジャ行」「ヤ行」「リャ行」「シャ行」の違いを認識しません。スペイン語は日本語よりもさらに音の少ない言語です。音の多い言語の話者が、音の少ない言語を学ぶ感覚、日本語話者にとってなかなか味わえない感覚ですね。
 「L」は、舌先が上前歯の付け根付近に接した状態で発音する音です。定冠詞 ”el”、”la”をはじめ、頻出する音なので発音できるように練習しましょう。
 私個人の経験としては、2~3週間程度で無意識に発音できるようになりました(暇さえあればLのつく単語を発音練習し、口に動きを慣れさせていた場合)。ちなみに、スペイン語の「L」と英語の「L」は、少しだけ違うような気がします。ただ、私がスペイン語留学中に一緒に勉強していたアイルランド人の「L」発音に対して、スペイン語ネイティブの先生は何も指摘していませんでした。なので、英語の「L」を発音できる人は、そのまま発音して問題ないようです。
 「RR」は、巻き舌を駆使して発音する音です。
 私の周囲だと、元々巻き舌ができる人は50%程度な気がします。申し訳ないですが、私も元々できたタイプだったのでコツ等を理解できているわけではありません。ただ、スペイン語ネイティブの中にも、稀に巻き舌を使えない人がいます。そういう人は普通の「R」と同じように発音していますので、あまり気にする必要はないのかもしれません。「し」と「ひ」を発音し分けられない日本人の方もいますよね。あんな感じかと思います。
 子音単体発音の練習も必要となります。
 日本語話者には「ン」以外の子音を単体で発音する習慣がないため、子音単体の音の多くが「ウ段」に聞こえるのではないでしょうか。頻出単語”adiós”も「アディオス」と表記されることが多いですが、”s”は子音単体で発音するべきであり、「ス(Su)」と発音するべきではありません。子音単体の”s”の音は、噛んだ歯の隙間から息が漏れ出る際に発される乾いた音であり、発音時に喉は鳴りません。もし手で触ってみて喉が鳴っていたとすれば、それは「ス(Su)」になっています。喉を触りながら、発音を調整してみましょう。

 

 

スペイン語は綴りと発音が完全に一致

 次に、「綴りと発音が完全に一致している」について解説します。スペイン語の単語はその綴りを見るだけで、初見でも正確に発音することができます。なぜなら、全ての単語はローマ字読みで、アクセントの位置にも規則がありますし、規則に例外がないからです。

 

スペイン語はローマ字読み

 スペイン語はローマ字読みするだけで正確に発音できます。ローマ字読みというのは、日本語話者がアルファベットを用いる際に使っている読み方です。キーボードでのタイピングでも用いていますね(ki-bo-donotaipingudemomotiiteimasune)。綴りを見れば音を知ることができます、私たちにとって非常に慣れ親しんだ読み方であるため、他の外国人に対して有利な立場に立てます。

(例1) “decide“:動詞「決める」
   英語発音「ディサイドゥ
   スペイン語発音「デスィデ
(例2) ”China”:名詞「中国」
   英語発音「チャイナ
   スペイン語発音「チナ

 スペイン語では、とにかく綴り通りです。 

 

スペイン語のアクセントは規則的

 スペイン語のアクセントの位置には規則性があり、それは以下の通りです。

 ⓪ a,e,oは強母音、i,uは弱母音として定義される。

強母音弱母音が並んだ場合、1つの音節として扱い、強母音を強く発音する。
 deuda  →  [deu]で1音節、[e]を強く発音
弱母音弱母音が並んだ場合、1つの音節として扱い、後の弱母音を強く発音する。
 ruina   →  [rui]が1音節、[i]を強く発音
強母音強母音が並んだ場合、音節を分ける。
 feo      →  [fe]と[o]は別の音節

① アクセントマーク「’(tilde)」があるなら、そこがアクセント。

 débil  →  [é]がアクセント
 talón  →  [ó]がアクセント
 rocío  →  [í]がアクセント 

 ② ①に該当せず、かつ、語尾がs,nまたはa,i,u,e,oのどれかであれば、最後から2番目の音節の母音がアクセント。

 lunes  →  [lu]が最後から2番目の音節、[u]がアクセント
 polen  →  [po]が最後から2番目の音節、[o]がアクセント
 tierra  →  [tie]が最後から2番目の音節、[e]がアクセント
 alivio  →  [li]が最後から2番目の音節、[i]がアクセント

 ③ ①と②のどちらにも該当しないなら、最後の音節がアクセント。

 parasol → [sol]が最後の音節、[o]がアクセント
 recrear → [ar]が最後の音節、[a]がアクセント
 calidad → [dad]が最後の音節、[a]がアクセント

 3+1つの規則さえ覚えてしまえば、例外が存在しないため、スペイン語はアクセントで困らずに済みます。

 

英語の不規則性

 一方、英語では

 woman →  ウーマン
 women →  ウイメン
 wonder →  ンダー

であるように、綴りと発音が一致していないため、初めて見る単語の発音を綴りから推定することができません。また、綴りとアクセントの間にも規則性がなく、

 suspect (第1音節がアクセント)  →  名詞:容疑者
 suspect (第2音節がアクセント)  →  動詞:疑う

であるように、同じ綴りで複数のアクセントが存在したりもします。
 つまり、英語は綴りと発音をそれぞれ別々に覚える必要があるというわけです。私たちが英会話で苦しむ理由かお分かり頂けたことかと思います。

 

最後に

 義務教育中に視覚的学習を叩きこまれてきた日本人にとって、音が少なく、ローマ字読み、かつ、アクセントが規則的な、スペイン語は非常に学習しやすい言語だと私は考えます。また、現在は世界共通語として英語が広まっていますが、もし仮にスペイン語が世界共通語として広まっていたとしたら、日本人は言語習得において強者側だったのではないかとも私は考えます。英語が下手な私ですが、スペイン語を母語とする方たちにスペイン語発音の悪さを指摘された経験はないですし、他の外国人に比べても上手く発音できている自負を持てています。英語学習において発音でつまずいた方、発音強者の立場で言語を学習してみませんか。

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