【グアテマラ】途上国で普及しにくい技術【ネット電気水道ガス】|雑記

私が3ヶ月滞在したグアテマラは、中米(中央アメリカ)に位置する、いわゆる発展途上国の1つである。以前の私に発展途上国へ訪れた経験はなく、グアテマラ滞在では非常に新鮮な感覚を味わうことができた。ここでは、グアテマラのような途上国に普及しにくい技術の特徴に関して、私が感じたことを私の偏見に基づいて記述したい。

結論

 インフラをはじめ、国や市町村などの行政が介入しなければならない技術は普及しにくい。一方で、スマホやキャッシュレス決済など、機器単体で機能する技術は普及しやすい。

 

本文

 私は、スペイン語留学を目的に、グアテマラのアンティグアという都市に3ヶ月滞在した。アンティグアは、16世紀から18世紀の間に建設された建物が残るコロニアル都市であり、街全体が世界遺産に登録されている。現在は、欧米から多くの観光客が訪れる観光都市として栄えている一方、多くのスペイン語学校を有するスペイン語留学の聖地としても知られている。都市の特徴上、近代的な建築物は存在しないが、観光客を迎えるために周辺都市よりはインフラや技術が進んでいる。

 

普及しにくい技術

 しかし、3ヶ月の間に、
  断水 10回以上
  停電(丸1日、災害などが理由ではない) 1回
  近隣でのガスコンロの爆発事故の知らせ 2回
  ホームステイ先の玄関先で車が炎上 1回
を経験。また、トラブルとは違うが、
  家庭では手洗い洗濯が一般的
もなかなか驚いた。これらは今の日本でなかなか味わうことがない。

 

水道

 アンティグアの街中には上下水道管が通っているのだが、私は3ヶ月の滞在期間中に10回以上の断水を経験した。
 断水があまりに頻繁に起きる理由として、「貧弱な水道管」や「観光客過多」を推測する。
 貧弱な水道管についてだが、アンティグアの街はコンクリートではなく石畳で覆われていて、水道管が地中浅いところに埋められている。そして、その上を車が走るため、振動や衝撃で水道管が簡単に破裂してしまうのだろう。噴水のように噴き上げている様子も一度だけ見た。
 また、繁盛記限定ではあるが、街の容量以上に観光客が訪れるため、上水の供給が足りなくなることもあるのだろう。特に夜間は蛇口から水が出ないことが多かった。私が滞在していた時、アンティグアの街では「セマナサンタ」と呼ばれる1ヶ月程度の祭りが開催されていた。この期間は欧米からの多すぎる観光客により、街がごった返していた。
 断水とは関係ないが、上下水道水の”処理”も不十分である。もちろん上水を飲むことはできない。胃腸の弱い私はペットボトルの水で歯磨きしていた。下水については、トイレットペーパーを流すことはできない(これは東南アジアでも同じ)し、現地人いわく特に処理することなく川に垂れ流しらしい。街中で極端な悪臭を感じることは少なかったが、ハエが多かったのはこのためだろう。

地中の水道管 1(グアテマラ アンティグア)

地中の水道管 2(グアテマラ アンティグア)

石畳の上を走る車(グアテマラ アンティグア)

観光客で溢れる通り

 

電気

 3ヶ月の滞在期間中に長時間(丸1日)の停電は1度しか経験しなかった。ただし、停電中の夜の街は完全に闇と化していた。非常灯が街に普及していないため、夜に停電すると一切の光が消滅する。
 そんな中、驚く点があった。ある土曜の朝に停電が始まったのだが、日曜の朝には解消されていた。解消されたということは、休日の夜にもかかわらず、誰かが復旧させたわけだ。これに限らず、アンティグアの街中では飲食店やスーパー等で雇用されている従業員の勤勉さを感じることが多かった。グアテマラ渡航前はラテン系の方々に対してあまり勤勉でない偏見を抱いていた私であったが、少し見方が変わった。アンティグアが外国人観光客を相手にしなければならない街であるため、厳選された人材しか働くことができない特殊な街なだけなのかもしれないが。

停電中の夜の街(グアテマラ アンティグア)

通常時の夜の街(グアテマラ アンティグア)

 

ガス

 アンティグア滞在中にガスコンロの爆発についての噂を2回耳にした。高圧ガス保安協会の報告によると、日本のガス事故発生数(2022年)は261件だそうで、人口1億2495万人に対して月22回の頻度である。一方で、アンティグア市が属するサカテペケス県(人口約35万人)では、現地人いわく月1以上の頻度でガスコンロが爆発するらしい。信憑性の高い数字ではないが、それを参考にした場合、サカテペケスは日本の16倍くらいの頻度でガス爆発しているようだ。
 ガス爆発が高頻度で発生する背景としては、「古いボンベの使い回し」や「無資格者による設置」を推測する。
 日本では、高圧ガス保安法によって、数年に1度ボンベの耐久性を検査することが義務付けられている。一方グアテマラではそういった法が整備されていないようで、古いボンベが使い回されている状態だった。検査義務を定める法が存在しない以上、不具合が生じるまで使い倒すことになるのだろう。
 また、ボンベ設置を請け負うための資格が存在しないらしい。つまり、必ずしも教育を受けた者が設置するわけではないことになる。例えば、設置が杜撰でホースがうまく接続されていなく、設置直後にガスが漏れ出ることは珍しくないとのこと。

 

自動車

 自動車自体は国内に普及している。ただし、安全面において不安がある状況だった。
 ホームステイしていた家の玄関先で、走行中の車の炎上に出くわしたことがある。私が部屋で勉強していると、焦げ臭いにおいが香ってきて、窓の外を見ると煙が上がっていた。消防車が到着するまでの間、ホームステイ先の家政婦さんと一緒に家の蛇口からホースを延ばして消火を手助けした。
 走っている最中の車が急に炎上しだす理由は、寿命を迎えているはずの車をそれでも走らせ続けるからだろう。グアテマラに車検という概念は存在しない。街では真っ黒な排気ガスを出しながら走る車が散見されるが、日本であれば車検を通らない。法で規制されていない以上、ボンベの件と同様、不具合が生じるまで使い倒すことになってしまう。

 

洗濯機(中高級家電)

 また、トラブルとは異なるが、洗濯機を持っていない家庭が一般的であり、基本的には手洗いしている。洗濯機が流通していないわけではない。家電量販店では普通に販売しているが、現地人いわく高価で買う気にならないとのこと。手洗いに費やす膨大な時間を考えると、洗濯機は費用対効果が高い家電だと私は考える。一般社団法人 中央調査社の調査によると、日本では1962年の時点で洗濯機の普及率が50%を超えている。当時は月収の数倍くらいしたのではないだろうか。それでも普及したということは、60年前の日本人も洗濯機の費用対効果が高いと判断したのだろう。アンティグアの人々が60年前の日本ほど貧しいとは思えなく、これは考え方や価値観の違いなのか。

 

普及しにくい技術の共通点

 これらトラブル・不便さに共通する特徴は、国や市町村などの行政が介入・資金投入しないかぎり解消は難しいということである。(洗濯機の件を除く)
 上下水道の整備・改善、高圧ガス取り扱いにおける法整備、車検制度の制定、これらを民間で実施することは難しい。中長期的な目線で国や市町村などの行政が介入する必要がある。一方で、グアテマラの大統領は任期4年で再選不可であり、10期くらい連続で別政党出身である(A党→B党→A党→B党→・・・ではなく、A党→B党→C党→D党→・・・のように所属政党が代わる)。これは、政党が乱立していて、かつ、強い政党が存在しないからである。だから、中長期的目線で国が動きにくい。状況が好転することはなかなか難しいだろう。

 

普及している技術

 ここまでグアテマラのインフラ・技術の不十分さについて述べてきたものの、あらゆる面において昭和の日本のような暮らしを送っているのかというと、それは違う。スマホは普及している。街中では電波が入る。Wifiを開放している施設も多い。インターネットにアクセスできることで、飲食店や小売店にはクレジットカート決済端末が普及している。しかもタッチ決済対応。クレジットカードのタッチ決済対応端末なんて日本でもコロナ禍による外圧でようやく普及できたくらいなのに。渡航前は、グアテマラでタッチ決済するとは思わなかった。

 

普及する技術の特徴

 これらグアテマラ(アンティグア)で普及していた技術の共通の特徴は、グアテマラ人の技術力に全く依存していない点である。スマホは、Samsung(韓国)やHUAWEI(中国)製であり、操作するだけなら大した技術はいらない。カードは、VISA(アメリカ)やMastercard(アメリカ)ブランド。クレジットカード決済端末のメーカーは分からないが、VISAやMastercardを使うためのものである以上、アメリカから買ったものだろう。安くて、複雑な施工や設定不要、海外から買ってくるだけでそのまま使える、そんな機器が普及しているようだと感じた。ちなみにグアテマラ2大携帯キャリア(sim)は、Claro(メキシコ)とTIGO(コロンビア)、どちらも海外の会社。

 一見生活が豊かになっているようには感じるが、同時に国の資産が流出していき、国内には技術が残らない。将来的に国が発展していく未来を想像することが難しかった。
 とはいえ、自分が発展途上国相手に商売する立場であれば、確かに、安くて、複雑な施工や設定不要で、そのまま使える物を売るだろうなとも思う。例えば、卓上IHコンロなど。ガス爆発事故を防げる上、コンセントに刺すだけで使える簡単家電として宣伝しながら。

 

最後に

 グアテマラ アンティグアの街の中には、進んだ技術と遅れた技術が混在している。国や市町村などの行政が介入しなければならない技術やインフラは普及しにくく、一方で、複雑な施工や設定不要、機器単体で機能する技術は普及しやすい。
 手洗いで洗濯している人が、SNSを楽しんだり、タッチ決済を利用したりしている。街はなかなかに歪な様相であるように感じた。

コメント